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心神喪失が無罪になる理由と背景について詳しく解説します

心神喪失

去年12月、北九州市のファストフード店で中学生2人を殺傷したとして逮捕された平原政徳容疑者(44)について、最初の鑑定留置の結果、心神喪失の可能性があるというニュースがありました。

参照:Yahoo!ニュース

これに対して、

このように否定的な意見が多いです。

そこで今日は心神喪失が無罪になる理由と背景について調べてみました。

心神喪失とは何か?

心神喪失の定義と法的意義

心神喪失とは、精神障害や極度の心理的負荷などの影響によって、自己の行為の是非やその結果を正しく理解し、それに基づいて自らの行動を制御する能力、すなわち責任能力を完全に失っている状態を指します。

これにより、その人物は自分の行動が法的にどのような意味を持つのか、またそれが他人にどのような影響を与えるのかといった判断ができなくなります。

 

日本の刑法第39条では、心神喪失状態にあった者による犯罪行為については、その責任能力の完全な欠如を理由として刑事責任を問わない、すなわち無罪とする旨が明文化されています。

この規定は、刑事責任が行為者の意思と判断に基づくべきだという法の基本的な考え方に基づいており、単なる感情的な同情ではなく、合理的かつ医学的な根拠に裏付けられた判断によって適用されます。

心神喪失の場面における犯罪の種類

心神喪失状態において行われる犯罪は非常に多岐に渡り、その内容も多様です。

たとえば、突発的な衝動によって引き起こされる傷害事件や、妄想に基づいた行動による殺人といった、極めて重大な結果を伴うケースも少なくありません。

こうした事件では、加害者自身が自分の行為の意味や影響を理解していないことが多く、犯罪の動機や背景も非常に複雑です。

 

一方で、軽微な事件も数多く存在しており、たとえば統合失調症や重度のうつ病による判断力の低下が原因で発生する窃盗、公共物へのいたずらや破壊といった器物損壊なども含まれます。

これらの犯罪は、表面的には単純に見えるものの、背後には深刻な精神的問題が潜んでいることが多く、慎重な対応が求められます。

心神喪失と精神疾患の関係

心神喪失の原因は多くの場合、統合失調症、双極性障害、重度のうつ病などの深刻な精神疾患に起因しています。

これらの疾患は、脳機能や感情の制御に深く関わるものであり、本人が現実と非現実の区別をつけることができなくなる状態を引き起こすことがあります。

たとえば統合失調症では、幻覚や妄想によって他者の存在や意図を誤認し、それに基づいた非合理的な行動を取ることがあります。

双極性障害では、極端な躁状態や抑うつ状態が判断力に深刻な影響を与える可能性があり、うつ病では自己否定的な思考や希死念慮が強まり、周囲の状況を冷静に捉えられなくなることがあります。

これらの病状が進行または悪化した結果、現実との接点を完全に失い、自己の行動がもたらす結果を認識できなくなることで、心神喪失と認定されるケースが見られます。

心神喪失が無罪となる理由

責任能力とは何か?

責任能力とは、違法な行為をしてもそれを違法と理解し、それをやめる意思を持てるかどうかという能力です。

心神喪失と判断された場合、この責任能力が完全に欠如していると見なされます。

心神喪失が無罪となるための条件

心神喪失が無罪となるには、犯行当時に責任能力がなかったことが医学的および法的に証明される必要があります。

通常、精神鑑定が行われ、その結果に基づいて裁判所が判断を下します。

再犯率と心神喪失の関連性

心神喪失による無罪判決が出た後、その者が再犯を犯すリスクが指摘されることがあります。

しかし、医療観察法に基づき、治療と再発防止策が講じられているため、全体としての再犯率は必ずしも高くはありません。

具体的な判例一覧

有名な心神喪失関連の判例

東電OL殺人事件(再審無罪/2012年)

 厳密には心神喪失ではないけれど、重要な誤判例としてよく引き合いに出されるケース。

ネパール人男性が1997年に東京で起きた女性殺人事件の犯人として逮捕・有罪確定。

しかし後のDNA再鑑定で冤罪が明らかになり、再審無罪。

池田小学校児童殺傷事件(2001年)

 大阪教育大学附属池田小学校に男が侵入し児童8人を殺害した事件。

犯人は宅間守。

 弁護側は「心神喪失」を主張したものの、裁判所は「完全責任能力あり」と認定し死刑判決。

ポイント:心神喪失の主張は有名だが認められなかった例。

広島・マツダ工場連続殺傷事件(2010年)

工場で元期間工の男が車で人をひき殺した事件。

裁判では心神喪失・心神耗弱が争点になったが、裁判所は責任能力ありと認定、無期懲役。

世田谷一家殺害事件(未解決だが、精神疾患が仮説として出たケース)

神喪失の法的議論ではないが、仮説として犯人は精神的な問題を抱えていた可能性が専門家の間で指摘されている。

心神喪失で無罪が認められた実例:長崎幼児殺害事件(2003年)

犯人は当時12歳の少年。

精神鑑定の結果、「行為時心神喪失」とされ刑事責任を問われず、少年法の保護処分となった。

秋葉原無差別殺傷事件(2008年)

犯人は加藤智大。

弁護側が「心神耗弱・心神喪失」を主張したが、裁判所は「完全責任能力あり」として死刑判決。

こちらも主張されたが認められなかった例として有名。

判例から見る心神喪失の決定要因

判例を通じて明らかになるのは、精神鑑定の信頼性や専門医の意見の重要性です。

心神喪失の有無は医学的根拠に基づいて慎重に判断されます。

ですが、実際の判例をまとめると、心神喪失の主張は非常に多いですが、実際に「無罪」となったケースは重い犯罪ではごく少数なのが分かります。

未成年や重度精神障害が明らかな場合が中心です。

心神喪失の判断基準

精神鑑定の重要性

精神鑑定は心神喪失の有無を判断する上で不可欠です。

複数の専門医による検査と面談により、被告の精神状態が詳細に評価されます。

心神耗弱と心神喪失の違い

心神耗弱は責任能力が著しく減退している状態であり、心神喪失はそれが完全に失われた状態です。

前者では減刑の可能性があり、後者では無罪となります。

医療観察法との関係

2005年に施行された医療観察法により、心神喪失状態で無罪となった者には、社会復帰のための治療が義務づけられています。

この制度により、再犯リスクの低減が図られています。

心神喪失による釈放後の問題

釈放された被告人の行動

無罪となった後も、精神医療機関での治療が継続されます。

しかし、地域社会での生活において再び問題行動を起こす可能性もゼロではありません。

遺族への影響と社会の反応

被害者遺族にとっては、加害者が罰を受けないことへの強い憤りや喪失感があります。

また、世論においても「無罪」の意味への理解不足から否定的な声が上がることがあります。

再犯防止策の現状

医療観察法に基づく治療や監督のほか、地域支援や福祉サービスとの連携が求められています。

再犯防止には社会全体の関与が必要です。

心神喪失を巡る社会的視点

心神喪失の理解と誤解

一般には「無罪=責任逃れ」といった誤解が多くあります。

しかし、心神喪失とは責任能力の完全な欠如を意味し、刑罰ではなく医療による対応が適切とされています。

被害者と加害者の心理

被害者やその家族は深い傷を負い、加害者もまた病に苦しんでいるという現実があります。

両者の立場を理解することが社会の成熟に繋がります。

心神喪失の問題に対する社会的意見

心神喪失を理由とした無罪判決に対しては、容認と否定の声が混在しています。

公平性、再犯リスク、被害者の感情をどう捉えるかが重要な論点です。

海外における心神喪失の法律

海外での心神喪失規定の違い

アメリカやドイツ、フランスなどでは「精神異常による無罪(NGRI)」制度が存在し、日本と類似した考え方に基づいていますが、制度設計は各国で異なります。

他国における心神喪失事例

アメリカでは精神疾患による銃乱射事件の被告に対して無罪とした例もあり、社会的な議論を呼びました。

各国の社会背景や文化も判断に影響を与えます。

外国の制度との比較

日本の制度は医療観察法の導入により、治療と社会復帰を重視する姿勢が強くなっています。

欧米諸国と比べてもバランスを重視した仕組みと言えるでしょう。

 

そういえば、まだ判決は出ていませんが2023年に札幌市のすすきののホテルで男性が殺害され首を切断された事件の主犯である田村瑠奈被告(31)は責任能力は問われないんじゃないでしょうか。。。

 

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