はじめに
近年、コンビニATMを狙った詐欺被害が増加の一途をたどっています。
ニュースなどでもよく見ますよね。
ちょっとした手数料や還付金の話につられて操作を続けるうちに、大切な預金が一瞬で引き出されてしまうケースも少なくありません。
本記事では、最新の手口3パターンを詳しく解説し、今日から実践できる7つの防止策をお伝えします。万一の被害を未然に防ぎ、安全にATMを利用しましょう。
コンビニATM詐欺の現状と背景
特殊詐欺全体の最新動向
令和6年(2024年)における特殊詐欺の認知件数は21,043件となり、前年から約10.5%増加。
被害総額は717.6億円と、前年比58.6%増という過去最大級の伸びを見せています。
特に被害の大都市圏への集中傾向は顕著で、東京・大阪・神奈川など7都府県で全体の約64.5%を占めています。
コンビニATMが狙われる理由
犯罪グループがコンビニATMを標的にする理由は以下の通りです。
- 24時間利用可能…深夜帯でも人目が少なく、装置の設置・撤去に好都合。
- 監視の甘さ…銀行支店内ATMに比べ、店員や警備員の監視が手薄。
- 操作の簡便さ…利用者が操作に不慣れでも「店員呼び出しボタン」で対応してもらえる安心感。
被害に遭いやすい世代
警察庁のまとめによると、2024年の特殊詐欺認知件数約2万件のうち、高齢者(65歳以上)の被害は1万3,707件にのぼります。
全体の約65%が高齢者という深刻な実態です。
注目の取り組み:山内剛店長の表彰
人気お笑いコンビ「かまいたち」の山内健司さんの弟で、島根県松江市のコンビニ店長を務める山内剛さんが、これまでに特殊詐欺を何度も未然に防いだ功績により、2025年4月30日に通算10回目の警察表彰を受けました。
剛さんはロマンス詐欺を防止し、その“阻止の匠”ぶりが地元警察関係者や俳優・杉良太郎警察庁特別防犯対策監からも高く評価されています。
最新手口3パターン
1. カード取り込み装置(スキマー)型
ATMのカード挿入口に不正装置(スキマー)や特殊加工シートを取り付け、利用者のキャッシュカードをATM内に取り込ませる手口です。
カードが戻らないことに気づいた被害者に対し、犯人は偽のコールセンターを装って電話をかけ、暗証番号を聞き出します。
「スキマー」は一見するとATM本体のカード挿入口とほとんど見分けがつかない、薄いプラスチックや金属製カバーです。装着イメージはこのような感じです。
スキマー装置のビジュアルイメージ
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外観
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カード投入口全体を覆う、縦長のプレート状カバー。
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ATM本体と同じような色・質感(あるいはメッキ加工)で、パッと見ただけでは違和感がありません。
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カバーの横や裏側に、細いケーブルや小型バッテリーを隠し持つスペースがあることも。
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取り込み機構
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カバー内部には細かいギアやローラーが仕込まれており、利用者がカードを差し込むと、あたかも「つっかかって戻らない」ふりをしながらカードを奥へ引き込んでいきます。
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被害者が「カードが戻ってこない!」と慌てているあいだに、装置内にカードが取り込まれ保持されます。
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特殊加工シート
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透明なシートをスキマーの開口部に貼り付けることで、カードが挿入できるけれど取り出せないようにする「罠」の役割を果たします。
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シートは内側からしか剥がせないため、ATMの正規メンテナンス時以外は装置が目立ちません。
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手口の流れ
- ATMにスキマーや透明シートを取り付け、カードのみを吸い込む。
- 被害者のカードが戻らないと「銀行システム障害」を偽り、サポートセンターを装って電話をかけさせる。
- 暗証番号を聞き出し、ATM外で出し子に不正引き出しを指示。
実際の事例
2024年9月19日、大阪市淀川区のコンビニATMで他人名義のキャッシュカードを用いて現金50万円を引き出したとして、大阪市の男(56)が窃盗容疑で逮捕されました。
警察は被害者宅への訪問とATM操作を結びつけ、防犯カメラ映像や通話記録を解析して検挙に至りました。
2. 偽電話誘導型
「お客様の口座に不正利用の疑いがあります」「システム障害でストップがかかっています」などと電話で嘘を吹き込み、ATM操作を継続させる手口です。
通話を維持することで被害者は周囲に助けを求められず、操作を続けてしまいます。
特徴と注意点
- 犯人はあたかも警察官・銀行員を装い、正当感を演出。
- 通話中はATMのヘルプボタンを押させず、周囲の人に気づかれにくい。
- ATM画面の指示通りに従わせ、暗証番号や振込操作を完了させる。
全国の警察では、「ATM利用中の通話禁止」を啓発しており、コンビニ店頭にステッカーを掲示するなど対策を強化中です。
3. フィッシングメール連動型
銀行や行政機関を名乗るSMS・メールを送信し、URLをクリックさせて偽サイトへ誘導。
カード情報やログイン情報を入力させたうえで、そのままATMへ誘導させて操作を指示する手口です。
特に「医療費還付金」「給付金のお知らせ」など、受給権のある高齢者を狙うケースが増えています。
典型的な流れ
- 「還付金が未受給です」と偽メールを送信。
- 偽サイトでキャッシュカード番号・暗証番号を入力させる。
- 別の不正口座へ出金またはATM操作を指示。
2024年前半の動向を見ると、フィッシング連動型詐欺は前年同期比で約23.5%増加しており、特に還付金詐欺が著しく増えています。
今すぐできる7つの防止策
1. ATM利用前に周囲をくまなく確認
カード投入口や操作パネル周辺に不審な装置やシートがないか、必ず目視で確認しましょう。
また、後ろに立っている人がいないかも要チェックです。
万一不審物を見つけたら、利用を中止して近くの店員や警察に連絡してください。
2. 暗証番号は必ず手で隠して入力
カメラやスキマー装置が暗証番号を読み取るリスクを防ぐため、手でキーパッドを覆って入力しましょう。
スマホのビデオ通話越しに操作を促される手口も報告されているため、画面共有や撮影を許可しないことが大前提です。
3. 怪しい電話には絶対に応答しない
「銀行員を名乗る不審な電話」は一度切り、自分の手元にある公式番号へ掛け直しましょう。
電話口で相手にATM操作をさせようとするのは全て詐欺の可能性が高いと認識してください。
4. SMS・メール内のURLは絶対に開かない
フィッシングサイトへ誘導されるリスクを避けるため、本文中のリンクを安易にタップしないようにしましょう。
どうしても情報を確認したい場合は、銀行や行政の公式サイトを自分で検索し、そこからログインするのが安全です。
5. 利用するATMはできるだけ固定する
同じ店舗・同じATMを継続して使うことで、不審な装置を早期に発見しやすくなります。
普段は支店内や銀行直営ATMを利用し、深夜帯の利用はなるべく避けましょう。
6. 預金明細をこまめに確認
スマホアプリやWeb通帳で毎日の取引内容をチェックし、心当たりのない取引があれば即座に警察や金融機関に連絡する習慣をつけてください。
7. 家族や高齢者への周知徹底
詐欺被害に遭いやすい高齢のご家族には、
- 「ATMでは通話しない」
- 「暗証番号は誰にも教えない」
- 「不審に思ったらすぐ手を止める」
などのルールをまとめ、紙に書いて目につく場所へ貼るなど、具体的な対策を共有しましょう。
被害に遭ったら?相談窓口リスト
相談窓口 | 連絡先 | 受付時間 |
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警察相談専用ダイヤル (#9110) | #9110 | 24時間 |
金融庁コールセンター | 0120-156-811 | 平日 9:00~17:00 |
消費生活センター(各自治体) | お住まいの市区町村窓口 | 平日 9:00~18:00 |
利用ATMのサポートセンター | 各銀行・コンビニ公式サイト参照 | 各社公式サイト参照 |
万が一被害に気づいたら、まずは最寄りの警察署または#9110へ通報。続いて金融機関にも連絡し、口座凍結や再発行手続きを進めましょう。
まとめ
- 特殊詐欺は2024年に過去最多規模で増加中。特にコンビニATM詐欺が目立つ。
- カード取り込みや偽電話、フィッシング連動の3大手口を知るだけで、被害リスクを大幅に下げられる。
- 本記事でご紹介した7つの防止策を日常習慣に取り入れ、異変があれば即通報を。
普段何気なく使っているATMだからこそ、ほんの少しの注意が大切です。
この記事を読んだ今日から、“安全なATM利用”を心がけ、大切な資産をしっかり守りましょう。
高齢のご両親や親せきをお持ちの方はそちらにも十分に気をかけてください。